量子コンピューティングの概念実証プロジェクトを実行する方法
要点
- 量子コンピューティングの概念実証プロジェクトを立ち上げるのに、必ずしも多額の費用は必要ありません。ビジネスにおけるユースケースの見極めをしたら、3〜4ヶ月の試験プロジェクトを10万ドル以下で実施できます。
- リソースをどのように使うのが適切でしょうか?量子コンピューティングがどのようなビジネス課題に対処できるかという答えを、最初から出す必要はありません。そのためにパートナーがいます。
- 概念実証プロジェクトは適切な視点で捉える必要があります。ゴールは必ずしも短期的なビジネス課題の解決ではなく、コンピテンシーを獲得することです。
今日の量子コンピューティングは、1960年代のメインフレームコンピューティングと同じ可能性に満ち溢れています。
違うのは、1960年代にはコンピュータの破壊的な可能性を人々が理解するための、歴史的前例がなかったことです。コンピュータが世界経済にどのような変革をもたらすか予見した先見性のある人々が、競争相手に対して大きな優位性を持ち、見事に勝利したのです。
Amazon、IBM、Googleが量子コンピューティングに大きく投資しているのも、デジタル革命が築いた前例があるからであり、他業界における量子コンピューティングの活用や成功する方法を調査している理由でもあります。誰も次の波に乗り遅れたくはないのです。
いまや企業にとっての課題は、いかにして乗り遅れないようにするかということです。とはいえ、もはやコンピューティングの草創期は過ぎているので、孤独に頑張る必要はありません。
ウェビナー「Quantum Computing How To: Executing A Successful Proof of Concept From Start to Finish(量子コンピューティングのハウツー:概念実証の開始から終了までを成功させる)」では、Deloitte、Informa、Classiqの専門家たちが集まり、企業が概念実証を通じて量子コンピューティングの影響や潜在的なメリットを探る方法について以下のようなトピックで議論しました。本記事ではウェビナーの要旨をまとめています。
- 概念実証プロジェクトを開始するタイミング
- 量子コンピューティングがビジネスにどう役立つか
- 外部の力を借りるべき時
ウェビナーでは、Omdiaの量子コンピューティングリサーチ担当のチーフアナリストであるSam Lucero氏がモデレーターを務め、以下のパネリストが登壇しています:
- Deloitte Consulting最高技術責任者
- Classiq最高マーケティング責任者
量子の概念実証を開始する最適なタイミングとは?
量子コンピューティングの導入時期として適しているのは、これに「長期的なビジネス上の正当性」がある場合であると、Classiqは指摘します。素晴らしい技術ではありますが、それがビジネスの課題を解決するためでなければならないということです。
また、Deloitte ConsultingのScott氏は次のように述べています。「量子コンピューティングを導入するまでのタイムラインは、企業のリスク許容度によって大きく異なります。ゲームチェンジャーとなり得るものに追いつく目的で、この比較的少額な投資をする価値はあると考えています。」
さらにScott氏は、「たとえ現時点で大きな利益が得られなくても、歩みを加速させる学びを得ることができます。その結果、新たな技術に追いつくために無理に走る必要もなくなり、世の中で起きていることに歩調を合わせることも容易になります」とも述べています。
ビジネスゴールが定まったら、次のステップとして小規模な実験を行うのが良いでしょう。たとえそれが古典コンピューティングで対処できるような単純な問題であっても、量子コンピューティングの有用性を把握するきっかけになります。
概念実証プロジェクトに妥当な期間は、通常は最長でも4ヶ月であり実験的プロジェクトの費用は高くつく必要はないとClassiqは述べています。実際、10万ドルもあれば十分に実施できるでしょう。
「必要なのは運用費用であり、企業が新しい機器を購入する必要はありません。少人数のスタッフを配置し、わずかなクラウドの時間に投資するだけで済みます。これは決して高額ではなく、裏を返せば、これを試さずに大きな競争劣位に陥る方が、よほど高くつく可能性があります」とClassiqは考えています。
また、だからこそ、経営陣のサポートが重要なのです。The Qubit Guy's Podcastでの会話を振り返り、量子コンピューティングの導入は早い段階でトップダウンで決定されることが多いとClassiqは指摘します。多くの場合、CIOやCTOが量子コンピューティングの戦略的重要性を理解し、検討チームを作ってユースケースを探し、概念実証を行うのです。
量子コンピューティングが解決できる課題とは?
では、最適なユースケースは何でしょうか?量子コンピューティングの概念実証が取り組むべき課題はどのように特定すればいいのでしょうか?
その答えは「もしも」と問うことにあるとClassiqは提案します。
例えば、金融ポートフォリオのバランスをとるシステムがあるとして、『もし、10倍、100倍の規模のポートフォリオでバランスをとることができたらどうなるだろうか?より優れたリスク評価を行えるようになったら?分子シミュレーションが数日ではなく数分でできたらどうだろう?』と自問してみるのです。
「もしその『もしも』の質問に対する答えがあなたをワクワクさせ、『そうだ、これは自分のビジネスに大きな利益をもたらすかもしれない』と思えるのであれば、それは量子コンピューティングを探求する価値のあるユースケースかもしれません」
量子コンピューティングの導入によって最も恩恵を受ける可能性がある市場には、金融サービス、物流、製薬のをはじめ、「最適化」によって利益が見込める産業が多く含まれます。
とはいえ、解決すべき課題を特定すること自体が困難な場合もあります。そこでDeloitteやClassiqのような企業が手を貸すことができる、とScott氏は述べています。
「DeloitteやClassiqのようなパートナーにアプローチする前に、ユースケースを知っておく必要はありません。私たちは、企業や組織と協働してその課題選択プロセスを進めることを、何よりも嬉しく思っています。実際、私たちの概念実証のほとんどは、重要かつ価値があり、興味深いユースケースを選定することから始まるのです。」
量子コンピューティングの導入はエキサイティングな一歩ですが、それがすべてのビジネス課題を一夜にして解決するわけではないことを念頭に置くことが重要だとClassiqは指摘します。現段階ではそれが重要なことではありません。
ゴールは必ずしも短期的なビジネス課題の解決ではなく、コンピテンシーを獲得することにあります。 私たちが協働する組織は、問題を分解し、それを量子コンピュータ上で動作する形で表現する方法を学びたいと考えています。そして、それを実行して結果が理にかなっているかどうかを確認したいのです
量子コンピューティングの導入を支援するのは誰か?
量子コンピューティングの導入コストは、メインフレームコンピューティングの黎明期に比べれば低いでしょう。なぜなら、企業はもはや単独で進める必要がないからです。
「同じような道のりを旅した組織を支援した経験があるパートナーを選ぶことが重要です」とScott氏は言います。
「あなたの会社がクラウド・ソリューション・プロバイダーと契約しているのであれば、量子力学の一歩を踏み出すのに役立つベンダー、つまり成功に必要な専門知識、ハードウェア、ソフトウェアを兼ね備えているベンダーとすでに一緒に仕事をしている可能性があります。」
「例えば、Amazonの長年の顧客であれば、クレジットを提供してくれるかもしれません。一方で、一部のベンダーはオープンソースプロダクトを提供していますが、その場合はサポートの継続性を把握することが重要です」とScott氏は続けています。
また、Classiqは知的財産も考慮すべき重要な事項であると付け加えました。
「量子がより戦略的になるにつれて、組織は自分たちの知的財産を保護したいと考えるようになります。そこで問題になるのは、誰が所有しているのか?誰が書いたのか?誰が時間をかけて改善できるのか?ということです。量子の重要性を知る組織であれば、自分たちの仕事から生まれた知的財産を所有したいと考えるのは当然のことですから」とClassiqは述べています。
この記事は、ウェビナー"Quantum Computing How To: Executing A Successful Proof of Concept From Start to Finish."(量子コンピューティングのハウツー:概念実証の開始から終了までを成功させる)」に基づいています
要点
- 量子コンピューティングの概念実証プロジェクトを立ち上げるのに、必ずしも多額の費用は必要ありません。ビジネスにおけるユースケースの見極めをしたら、3〜4ヶ月の試験プロジェクトを10万ドル以下で実施できます。
- リソースをどのように使うのが適切でしょうか?量子コンピューティングがどのようなビジネス課題に対処できるかという答えを、最初から出す必要はありません。そのためにパートナーがいます。
- 概念実証プロジェクトは適切な視点で捉える必要があります。ゴールは必ずしも短期的なビジネス課題の解決ではなく、コンピテンシーを獲得することです。
今日の量子コンピューティングは、1960年代のメインフレームコンピューティングと同じ可能性に満ち溢れています。
違うのは、1960年代にはコンピュータの破壊的な可能性を人々が理解するための、歴史的前例がなかったことです。コンピュータが世界経済にどのような変革をもたらすか予見した先見性のある人々が、競争相手に対して大きな優位性を持ち、見事に勝利したのです。
Amazon、IBM、Googleが量子コンピューティングに大きく投資しているのも、デジタル革命が築いた前例があるからであり、他業界における量子コンピューティングの活用や成功する方法を調査している理由でもあります。誰も次の波に乗り遅れたくはないのです。
いまや企業にとっての課題は、いかにして乗り遅れないようにするかということです。とはいえ、もはやコンピューティングの草創期は過ぎているので、孤独に頑張る必要はありません。
ウェビナー「Quantum Computing How To: Executing A Successful Proof of Concept From Start to Finish(量子コンピューティングのハウツー:概念実証の開始から終了までを成功させる)」では、Deloitte、Informa、Classiqの専門家たちが集まり、企業が概念実証を通じて量子コンピューティングの影響や潜在的なメリットを探る方法について以下のようなトピックで議論しました。本記事ではウェビナーの要旨をまとめています。
- 概念実証プロジェクトを開始するタイミング
- 量子コンピューティングがビジネスにどう役立つか
- 外部の力を借りるべき時
ウェビナーでは、Omdiaの量子コンピューティングリサーチ担当のチーフアナリストであるSam Lucero氏がモデレーターを務め、以下のパネリストが登壇しています:
- Deloitte Consulting最高技術責任者
- Classiq最高マーケティング責任者
量子の概念実証を開始する最適なタイミングとは?
量子コンピューティングの導入時期として適しているのは、これに「長期的なビジネス上の正当性」がある場合であると、Classiqは指摘します。素晴らしい技術ではありますが、それがビジネスの課題を解決するためでなければならないということです。
また、Deloitte ConsultingのScott氏は次のように述べています。「量子コンピューティングを導入するまでのタイムラインは、企業のリスク許容度によって大きく異なります。ゲームチェンジャーとなり得るものに追いつく目的で、この比較的少額な投資をする価値はあると考えています。」
さらにScott氏は、「たとえ現時点で大きな利益が得られなくても、歩みを加速させる学びを得ることができます。その結果、新たな技術に追いつくために無理に走る必要もなくなり、世の中で起きていることに歩調を合わせることも容易になります」とも述べています。
ビジネスゴールが定まったら、次のステップとして小規模な実験を行うのが良いでしょう。たとえそれが古典コンピューティングで対処できるような単純な問題であっても、量子コンピューティングの有用性を把握するきっかけになります。
概念実証プロジェクトに妥当な期間は、通常は最長でも4ヶ月であり実験的プロジェクトの費用は高くつく必要はないとClassiqは述べています。実際、10万ドルもあれば十分に実施できるでしょう。
「必要なのは運用費用であり、企業が新しい機器を購入する必要はありません。少人数のスタッフを配置し、わずかなクラウドの時間に投資するだけで済みます。これは決して高額ではなく、裏を返せば、これを試さずに大きな競争劣位に陥る方が、よほど高くつく可能性があります」とClassiqは考えています。
また、だからこそ、経営陣のサポートが重要なのです。The Qubit Guy's Podcastでの会話を振り返り、量子コンピューティングの導入は早い段階でトップダウンで決定されることが多いとClassiqは指摘します。多くの場合、CIOやCTOが量子コンピューティングの戦略的重要性を理解し、検討チームを作ってユースケースを探し、概念実証を行うのです。
量子コンピューティングが解決できる課題とは?
では、最適なユースケースは何でしょうか?量子コンピューティングの概念実証が取り組むべき課題はどのように特定すればいいのでしょうか?
その答えは「もしも」と問うことにあるとClassiqは提案します。
例えば、金融ポートフォリオのバランスをとるシステムがあるとして、『もし、10倍、100倍の規模のポートフォリオでバランスをとることができたらどうなるだろうか?より優れたリスク評価を行えるようになったら?分子シミュレーションが数日ではなく数分でできたらどうだろう?』と自問してみるのです。
「もしその『もしも』の質問に対する答えがあなたをワクワクさせ、『そうだ、これは自分のビジネスに大きな利益をもたらすかもしれない』と思えるのであれば、それは量子コンピューティングを探求する価値のあるユースケースかもしれません」
量子コンピューティングの導入によって最も恩恵を受ける可能性がある市場には、金融サービス、物流、製薬のをはじめ、「最適化」によって利益が見込める産業が多く含まれます。
とはいえ、解決すべき課題を特定すること自体が困難な場合もあります。そこでDeloitteやClassiqのような企業が手を貸すことができる、とScott氏は述べています。
「DeloitteやClassiqのようなパートナーにアプローチする前に、ユースケースを知っておく必要はありません。私たちは、企業や組織と協働してその課題選択プロセスを進めることを、何よりも嬉しく思っています。実際、私たちの概念実証のほとんどは、重要かつ価値があり、興味深いユースケースを選定することから始まるのです。」
量子コンピューティングの導入はエキサイティングな一歩ですが、それがすべてのビジネス課題を一夜にして解決するわけではないことを念頭に置くことが重要だとClassiqは指摘します。現段階ではそれが重要なことではありません。
ゴールは必ずしも短期的なビジネス課題の解決ではなく、コンピテンシーを獲得することにあります。 私たちが協働する組織は、問題を分解し、それを量子コンピュータ上で動作する形で表現する方法を学びたいと考えています。そして、それを実行して結果が理にかなっているかどうかを確認したいのです
量子コンピューティングの導入を支援するのは誰か?
量子コンピューティングの導入コストは、メインフレームコンピューティングの黎明期に比べれば低いでしょう。なぜなら、企業はもはや単独で進める必要がないからです。
「同じような道のりを旅した組織を支援した経験があるパートナーを選ぶことが重要です」とScott氏は言います。
「あなたの会社がクラウド・ソリューション・プロバイダーと契約しているのであれば、量子力学の一歩を踏み出すのに役立つベンダー、つまり成功に必要な専門知識、ハードウェア、ソフトウェアを兼ね備えているベンダーとすでに一緒に仕事をしている可能性があります。」
「例えば、Amazonの長年の顧客であれば、クレジットを提供してくれるかもしれません。一方で、一部のベンダーはオープンソースプロダクトを提供していますが、その場合はサポートの継続性を把握することが重要です」とScott氏は続けています。
また、Classiqは知的財産も考慮すべき重要な事項であると付け加えました。
「量子がより戦略的になるにつれて、組織は自分たちの知的財産を保護したいと考えるようになります。そこで問題になるのは、誰が所有しているのか?誰が書いたのか?誰が時間をかけて改善できるのか?ということです。量子の重要性を知る組織であれば、自分たちの仕事から生まれた知的財産を所有したいと考えるのは当然のことですから」とClassiqは述べています。
この記事は、ウェビナー"Quantum Computing How To: Executing A Successful Proof of Concept From Start to Finish."(量子コンピューティングのハウツー:概念実証の開始から終了までを成功させる)」に基づいています